激痛をなめてくれる犬
右肩に激痛があるのだから患部は右肩であると当の本人もしばしば勘ちがいしている。しかし、私の患部は正しくは脳にあるらしい。入院したとき、脳出血後遺症の視床痛が右肩に感じられているのだ、と若い医師が教えてくれた.世に二大激痛というのが在りました手ね、末期ガンの痛みと視床痛がそれです。後者にはモルヒネもろくに効かず、痛さのあまり肩ごと腕をもいでくれと泣いてうったえる患者もいるほどです。「お気の毒です」。医師は"永遠の無痛者"といった晴れやかな顔つきで、いわでものことを加えた。脳血管に障害があるために感覚システムに混乱をきたし肩が焼かれるように主観的に感じてしまうが、肩は焼けてなどない。でも、主観的であれば肩はまちがいなく痛い。痛みを唯心論的にとらえるべきか唯物論的に考えるべきか、痛みの波間でいつも惑い、他者の痛みを思う。見えるようでじつは見えない痛みの在りかを。
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