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2011.11.19

2 or 3 copy

時代はさらに進んでいます。2006年、私のいる東大先端研の油谷浩幸教授や石川俊平准教授のグループは、ヒトゲノム全体で遺伝子の数を確かめる方法をつくり、「ネイチャー」という科学雑誌に発表しました。

 普通は、私達は父と母から1コピーずつの遺伝子をもらい2コピー持っていると考えていました。ところが、油谷先生たちは遺伝子によっては3コピーかもっと多い場合、または1コピーに減っている場合があることを見つけました。特に、細胞が癌になっていくときに、コピー数が増え、それが原因になっている場合があることがわかってきました。
 今年6月、ロンドンのはマースミス病院のウンガー博士らは、チェルノブイリ原発事故によって被曝し、甲状腺癌になった25歳以下の患者と、汚染地区ではないところに住み、被曝していない甲状腺癌の患者の遺伝子を比べた研究をアメリカ学士院会報に報告しました。その研究によれば、被曝した患者の39%で染色体7番のある部分(7q11と呼ばれています)に変異が見つかったのに対し、被曝していない患者にはDNAの異常はまったく見つかりませんでした。被曝した甲状腺癌患者のDNAでは、7q11に2コピーしかないはずの遺伝子が3コピーになっていたのです。ところが、非汚染地区で癌になった患者の細胞では2コピーのままだったのです。
 被曝者でだけ、染色体7q11のコピー数が増えることが多いのは間違いなさそうです。つまり、被曝の足跡がDNAに残る可能性が始めて確認されたのです。ウンガ-博士は福島の子供たちも非常に心配されており、eメールの最後を、I wish you and your country all the best!(日本の皆さんに幸あらんことを!)と結んでいます。

 放射線があたったりしてDNAが切断されると、なぜ2コピーの遺伝子が3コピーになるかは、繊毛虫や、酵母では昔からパリンドローム仮説という学説がありました。それは2007年には、ヒトの細胞でも起こることがクリープランド・クリニックの田中尚博士により証明されています。

児玉龍彦(東京大学教授)/原発 私は警告する『文藝春秋2011・10』

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