3866ガル
地震の揺れには縦揺れと横揺れがあるが、兵庫県南部地震では、縦揺れが非常にひどかった。どーんと下から突きあげるような力が作用し、そのため新幹線や高速道路などの巨大な橋脚が破壊された可能性が強い。
物理的には、地球の重力(980ガル)より大きな上下方向の加速度を受ければ、建造物が地底から浮きあがるからである。記録された最大加速度は、大阪ガスの833ガルだったが、鷹取駅では共振現象によって上下方向に1500ガルの加速度に達した。
ところが兵庫県南部地震を解析した原子力安全委員会の検討会は、「兵庫県南部地震では、縦揺れ(上下動)は横揺れ(水平動)の半分以下であった」との結論を出し、この程度の地震では原発は破壊されないとの見解を示した。しかしそのデータを見ると、上下動/水平動の比率が0.5を超える数値がほぼ半数を占め、特に震源に近く、大被害を受けた場所ほど上下動/水平動が大きくなっておろ、事実とはまったく矛盾していた。原子力安全委員会の結論は、震源より遠い地点でのデータを大量に入れ、その水増しによって平均値を出す作為的な数値だったことが判明したのである。
この作為の理由も明らかであった。日本列島が体験してきた大部分の地震は、横揺れが大きな破壊の原因となってきたので、原子力発電所などの原子力プラントは、水平方向の揺れ(横揺れ)を主体にして設計が行なわれてきた。耐震設計では、横揺れの2分の1の上下動(縦揺れ)に耐えられればよい、とされてきた。ところが兵庫県南部地震では上下動/水平動の比率が0.5を超えたので、原子力プラントが安全でないと立証されたため、水増し平均データを使って安全を強弁しなければならなかったのである。
2008年6月14日に起こった岩手・宮城内陸地震では、震源から最も近い岩手県一関市内の観測点で、3866ガルというとてつもなく大きな上下動を記録したのだから、このような上下動であれば浜岡原発でも完全に浮き上がってしまうのである。
広瀬隆『原子炉時限爆弾』ダイヤモンド社2010年
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