病気で得た視野
以来、ラトリースは以前よりも頻繁に、僕に他の患者と話をしてほしいと頼むようになった。他の患者にとって、運動選手が自分たちと同じように闘っているのは、力強く感じられるようだった。
ある日の午後ラトリースは、僕はいまだによく質問するが、その質問の内容が変わってきた、と指摘した。最初のころ、僕の質問はすべて自分に関することに限られていた。自分の治療のこと、自分の投与量のこと、自分だけの問題について。今では僕は、自分以外の人のことについて、質問するようになっていた。800万人のアメリカ人が何らかの癌をかかえて生きている、というのを読んだときにはびっくりした。僕の問題は個人的なもので、他人とは関係ない、などと言えなくなってしまったのだ。「こんなに多くの人が癌だなんて、信じられるか?」 僕はラトリースに言った。
「あなたは変わったわ」。ラトリースは満足げだった。「広い視野でものを見られるようになってきたわね」
ランス・アームストロング『ただマイヨ・ジョーヌのためでなく』講談社文庫2008年
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