狂気を出せ
つかさんの人を見抜く力は、飛びぬけていた。出会った当時の僕は、表面的には内向的で寡黙な人間に見えるが、その実、家では胡座をかいて女房を罵っているようなところがあった。
つかさんはそれをスパッと見抜き「風間、おめえおとなしそうな顔してるけどよ、うちに帰ってテーブルひっくり返えしたりしねえか」と聞いてきた。
「そういうの出さなきゃだめだ。お前このまま行ったら、ナイーブなだけで何にもならない。そんなのつまらないだろう? 人のことを妬んだりもするはずだ。お前の中にある狂気じみたものを出せ」
そういった醜い部分を、つかさんが舞台の上のキャラクターに埋め込んでいく。自分が投影されたともいえるその役を演じているうちに、不思議と「人間にはこういう醜い部分もあって当然なんだ。これでいいんだ」と思えてくる。一方で、僕の正義感や男気といった部分もきちんと描かれている。つかさんの舞台に立って、こんな自分でも自信を持って生きていけると教わった。歳は一つしか違わないが、つかさんは僕にとって"別格"の存在だった。
風間杜夫(俳優)/追悼 つかさんは「蒲田行進曲」そのものだった『文藝春秋2010・9』
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