保身耳
胎児や乳児ができる抵抗の手段といったら、耳を塞ぐことです。といっても、自分の手で耳介を塞ぐわけではありません。もっと巧妙ですぐれた機能が耳にはあったのです。
それが中耳です。中耳は、いやな音声だけにフィルターをかけて、聞こえても聞こえないように調整するすごい機能を持っていたのです。つまり音声の特定部分にだけカーテンをかけるというような細かな調整をすることができるようです。こうすることで胎児や乳児は、ショックやストレスをもたらす音の世界から自分自身を守るのです。しかしそのショックやストレスが大きすぎると、音にカーテンをかけ、以降まったく耳を閉じてしまうこともあります。
ただ、一部のストレスをもたらす音声(たとえば母親の声)だけに音のカーテンをかけるというようなことは、ごくふつうのことです。この程度のストレスはだれでもあるのです。これを「保身耳」といいます。しかしその度合いが極端な場合、ほとんど大半の音にカーテンをかけてしまうことがあります。
音のカーテンをかけるということは、社会の窓を閉じるということです。こうして自閉症となります。
自閉症とは、「耳」を閉じることだったのです。なぜなら、胎児や乳児にとっては、耳こそが社会の窓なのですから。
篠原佳年『奇跡の『聴覚セラピー』」PHP研究所1999年
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