出会う季節
前坂 本当に最近は、哲学のある政治家、深みのある言葉を発する人がいなくなりました。いま日本で求められるのはリーダーシップとリーダーパワーを兼ね備えた政治家ですが、これがいない。
保坂 ですから、やはりこの時代の日本人には特筆すべき人物が数多くいた。これは政治リーダーじゃなくて、変わり者の学者ですけど、南方熊楠はかつてロンドンの図書館で毎日勉強していて、そのとき孫文と知り合うんですね。孫文はその後、辛亥革命を起こすのですが、のちに日本に来て、ぜひとも南方と会いたいと彼をさがしだした。
そのとき南方は和歌山の田辺に住んでいて、一度は再会しますが、それきりになった。のちに彼の言った言葉がすごくいいんですよ。「人と人の出会いには季節がある」と。その季節が過ぎたら、もう会っても意味はないんだと言った。それで孫文も納得する。昔はこういうすごいことを言う日本人がいたんです。最近はまったくいなくなったと思うけど。
座談会 保阪正康×前坂俊之×原武史/かつて、この国には志と知恵と誘起に満ちた男たちがいた 幕末から昭和 日本を変えた30人の男たち『週刊現代2010.8.14』
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