コーナーストーンとリンチピン
会談後に両大統領はそろって記者会見を行ったが、オバマ大統領が使ったある表現に注目したメディアは少ない。「韓国との同盟関係は、米韓にとどまらず、太平洋地域全体の安全保障にとっての『lynchpin(リンチピン)だ。韓国は最も親しい友人の一人だ」
リンチピンとは、車の輪留めに使う楔のことだが、英語では、グループの中核をなす重要人物のことを指す。つまり、韓国が「要の役割」を果たしているという認識をアメリカが持ったことを意味している。この表現は、昨秋来、日米間で米軍普天間飛行場の移設問題が迷走し始めて以降、クリントン国務長官が使い始めていた。
李明博大統領と極めて近い関係者は、米韓首脳会談には明らかにされていない極秘部分があったと証言する。
北朝鮮への対応や米韓のFTA(自由貿易協定)についての協議を行った後、両首脳会談の話題は日米同盟の現状に移った。まず、李明博大統領がこう切り出した。
「このところの日米関係、とりわけ日本国内の政治状況の不安定化について懸念している。特に、普天間問題をめぐって日米同盟が深刻な状況に陥っているなかで、沖縄の米軍ヘリが不時着したり、米兵による不祥事も相次いでいると聞く、大変心配だ」
オバマ大統領はこう応じた。
「日米同盟は引き続きアジア太平洋地域の安全保障にとって礎石の役割を果たすと信じている」
そして、李明博大統領が次に繰り出した言葉に、同席していたホワイトハウスの補佐官らは目を見張った。
「普天間基地の問題が日米同盟にとって最悪のシナリオに陥った場合、基地の移転先については、韓国国内の軍施設を提供したい」
この後、オバマ大統領がどのように応じたのか、筆者の取材に、米韓双方の当局者は明らかにできないとしている。唯一、青瓦台の関係者だけが「仮に社交辞令であったとしても、オバマ大統領がその申し出に感謝したことは想像に難くないだろう」と語った。
「普天間韓国移設」という、日米同盟を揺るがしかねない、極めて高度な政治的かつ軍事的問題について、当局者の口は堅い。ホワイトハウスのある高官は、「ホワイトハウス内部でも高官レベルに情報が留められている」と緘口令が敷かれたことを示唆する。
大城俊道(ジャーナリスト)/オフレコ公開李明博が「普天間韓国移設」を極秘提案『文藝春秋2010・9』
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