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2010.08.24

将軍を袖にした女

山内 まずは徳川慶喜の側室・お芳から始めましょうか。というのも、男がだらしないと、その身辺の女性もどうしようもない、というのは幕末も今も変わらない。逆も真なりですが(笑)。慶喜とお芳のエピソードには、それがよく出ていると思うのですが。

中村 お芳というのは、慶喜と親交の深かった江戸の火消し・新門辰五郎の娘ですね。本来、将軍は一定の格式に則って側室をおくものですが、お芳の場合はまったく手続きなし、新門辰五郎に頼んで、いわば野合してしまったわけです。
 だから彼女に将軍の側室という認識はなく、いい加減に生きた。大坂から慶喜が開陽丸で逃げるときに、彼女だけ連れていたんですよ。徳川家ゆかりの馬印も放ったらかしにして。
山内 それで仕方なく、馬印を新門辰五郎が担いで東海道を江戸に上ったというやつね。お芳はその後、慶喜のもとを逃げてしまう。
中村 しかも、若い男をつくって新潟へ逃げたらしいのです。要するに、将軍を袖にした唯一の女です(笑)。
山内 慶喜の性格のすべてがそこに尽きていると思う。彼が一番頼りにした新門辰五郎の娘にまで愛想を尽かされた器量だからね。

対談 山内昌之×中村彰彦/幕末の英雄が愛した悪女・賢女・淫女たち『週刊現代2010.9.4』

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