受精卵とiPS細胞の違い
立花 人間はみな一個の受精卵から生まれます。それが分裂に分裂を重ねて、組織ができ、臓器ができて、六十兆個の細胞から成る人間になる。その点では受精卵とiPS細胞は似ているように思いますが、どこに違いがあるんですか?
山中 iPS細胞は受精卵と違って、それ一個から生命が生まれることはありません。受精卵は分裂を繰り返して四~六日経つと、百個くらいの細胞の塊になります。これを胚盤胞と言いますが、胚盤胞は胎盤になる栄養外胚葉と、体の細胞になる内部細胞塊という二つの部分からできています。理論上、iPS細胞からは体のあらゆる細胞を作ることができますが、この栄養外胚葉だけは作れないので、単独では生命を生み出せません。これが大きな違いです。ですからiPS細胞は"万能細胞"ではなく、より正確には、万能と区別して「多能性」細胞と呼ばれています。
山中伸弥(京都大学iPS細胞研究所長)×立花隆(評論家)/立花隆iPS細胞の巨人に迫る『文藝春秋2010・9』
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