グッバイ、サンキュー
僕は2歳のときに親に捨てられ、タクシーの運転手をしている人に拾われて育てられた。そのおかげで、いまも生きられています。
僕が勤める諏訪中央病院(長野県茅野市)のそばの林の中に、13年ほど前に亡くなったその育ての親の名前をとって、「岩次郎小屋」という丸太小屋を作りました。八ヶ岳が見えるこの丸太小屋で、僕は最期を迎えたい。(中略)
岩次郎さんにも、この丸太小屋に10年ほど住んでもらいました。僕と岩次郎さんとは血がつながっていませんが、ここに岩次郎さんを先頭にした家族を作りたいんです。300年後、「この小屋を作ったのは岩次郎じいちゃんだ」と伝わってほしい。それが僕の最大の恩返しであり、壮大な夢。僕はこの丸太小屋を愛しているので、自分が死ぬときは、ここで立ち枯れるように死にたい。最期の最期は、看取ってくれる家族たちに、「グッバイ、サンキュー」と言って死ねたらいいな。
お葬式は、小屋から5分くらいの距離にあるお寺で、できれば家族とごく少数の親友だけでしんみりとやってほしいですね。お経も短くしてもらって、できるなら戒名もなしで読経してもらえたら嬉しい。
場が暗くなり過ぎるのも嫌なので、僕の好きなロックシンガー、ジャニス・ジョプリンの『サマータイム』を流してくれたら、より嬉しい。
鎌田實(医師・61歳)/八ヶ岳を望む丸太小屋で立ち枯れるように。家族には「グッバイ、サンキュー」と『週刊現代2010.6.26』
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