人生ゲーム中
タクシーを乗り回して親父のツケでお寿司を食べたり、空気銃で友だちの足を撃ち抜いてしまったり、家事を引き起こしそうになったこともあった。
それは、ある夜、友だちの家でティッシュに火をつけて窓から飛ばすという遊びをしていたのが発端になった。
マンションの六階だったか七階だったかはっきり覚えていないけれど、暇だからって、ティッシュに火をつけて窓から飛ばしていたのだ。火のついたティッシュが飛んでいき、とても綺麗に見えた。でもすぐに消えて風で舞い上がっちゃうから、何かいい方法はないかと考えたのが、プラモデルの塗装に使うシンナーだった。
ティッシュにシンナーを染み込ませて燃やすと当然よく燃える。重さもついて、風に舞い上がらずにすーっと下へ落ちていく。「落下傘だ」「綺麗だね」と言って、どんどん飛ばして遊んでいた。
少しの間遊んでいたけれど、すぐに飽きてしまい、友だちの部屋に移って「人生ゲーム」を二人でしていたら、ウーウー、ウー、ウーというサイレンが聞こえてきた。窓から見たら、一階のベランダから火がぼんぼん出ているじゃないか。その前にはマンションのゴミ捨て場があって、そこも燃えている。たぶんそのゴミ捨て場に火がついて、一階のベランダに燃え移ったのじゃないかと思う。
建物の前、狭い道路の向こうにはガソリンスタンドがあった。ガソリンスタンドまで火事になったらさらに大変。次から次へと消防車がやってきた。
二人で『あーっ』と叫んで、
「俺たちが落とした火かな」
「間違いないよ、タイミング的に間違いない」
「やばいよ、どうしよう。野口、あのティッシュに俺らの指紋がついてないかな」
「でもさ、燃えてるから残ってないんじゃない?」
二人とも真っ青になって話していた。
「どうしよう」
「じゃあ、とりあえずこういうときは『人生ゲーム』を続けよう」
「そうだな、続けよう」
二人でルーレットを回して、イチニ、イチニ。
そのうち友だちのお母さんが『火事よ、下が火事よ』と慌てて入ってきたので、友だちと僕は「なんでだろうね」「大丈夫かな」と言いながら歯はカタカタカタカタ・・・・・・。
それから一週間くらいは、学校からどきどきして家に帰ってきた。今日は警察が待っているんじゃないか、今日は待っているんじゃないかとびくびくしていたのだ。
野口健『確かに生きる』集英社文庫2009年
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