遊びがなくては・・・
漱石は、あまり知られていませんが一年留年しているんです。遊んでいて留年したんです。
その頃の精一杯の遊びというのは、競艇、乗馬などで、隅田川でボートを漕いだり、馬場へ行ったり、いまも大学の大会がありますけど、そういうことをやっていた。そのほかに、寮で勉強ばっかりやってるやつはけしからんということで、仲間と一緒に、がり勉の部屋の入り口に机や椅子を積み重ねて邪魔したとか、そういういたずらをやっている。そういう遊びに夢中になって一年留年しています。これは、いってみれば、友だちが悪がきだったということもあるんです。一番仲がよくて、いたずら仲間だったのは、中村是公という、のちに満鉄総裁になった人です。この人がいたずら仲間の大将でいたずらばかりしていたんですね。漱石は、この遊びがなかったら、あれだけの優れた小説家にはならなかったと思います。
吉本隆明講演『「芸術言語論」』2008年
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