サラリーマンから漁師
意を決して会社を辞めた私は、十月二十日午前六時すぎ、第一幸福丸に乗り込んで下田港を出港しました。
キンメダイ漁は、思っていた以上に過酷でした。仕事が満足にできないのはもちろん、ひどい船酔いに苦しみました。食べないといけないとわかっていても、何も口にできません。
漁師になることを妻はずっと反対していましたが、私は自転車で培った体力と、精神力に自信がありましたから、船酔いにさえ慣れれば・・・・・・・と思いました。ほとんどの人は、一度体験しただけで辞めていくと聞き、「自分は違う」と、少し気負ったところもありました。
にゅう原貴光/漁船転覆90時間流されて『文藝春秋2010・2』
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