手探り
出産が終わると後座といって剥がれた胎盤がでてくるのであるが、九頭生まれて次がなかなか出てこない、でも胎盤も出てこない、という状態になると、母体の中にまだ赤ちゃんが残っているのかどうか、手を中に入れて探るという仕事もある。これはなかなか強烈だ。
ビニールの長手袋をして、二百キロ近くある母豚の陰部から手を入れて子宮の中を探る。二の腕まですっぽり入ってしまう。もし母豚が不快になって立ち上がったりすれば、骨折する危険もある。Yさんは踊るようにすらりとなめらかに腕を入れ、すみやかに探って腕を抜く。探ってみてなにもいなければ、胎盤が出てくるのを待つ。
胎盤は、なんというか、まあ内臓だ。ぐにょぐにょして赤黒い。人間の世界では胎盤を食べるのが一部で流行っているようで、私の知り合いも食べたと言っていた。しかし豚の胎盤は食用になっていない。たしかにあまりおいしそうには見えない。ただし栄養は満点であるし、プラセンタの原料になるので出荷している農場もある。
内澤旬子/飼い食い 新連載第4回・・・分娩の現場で『世界2010・2』岩波書店
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