アンラーニングでリセットが必要
松本 なるほど。私は「アンラーニング」(反学習)を重視しています。パターンに沿って高い偏差値の京都大学に入ってきた学生は、入学試験に合格するために、多くの知識をめいいっぱい詰め込んできています。それを一度リセットしてもらうのです。
松本 落ちこぼれ恐怖症の学生にとっては恐ろしい一歩かもしれませんが、アンラーニングをしなければ、新しい知識を入れて先に進めない。例えば科学の世界でその分野のトップを目指すような研究をするためには、受験で覚えたテクニックや偏差値の高さだけでは役にはたちませんから。
私が考えるいい学生とは、どんな場面に直面してもやっていける人間です。そのために人の痛みやいい部分を感じ取る能力や、たとえ熟成していなくても「本で読んだ」「聞いたことがある」などと多くの引き出しを持つことが大切です。
その引き出しが教養なのです。まず入試までの偏差値教育を一旦消し去って、学部ではしっかり教養を身につけなくてはいけない。ところが京大は、大学改革をして教養課程をなくしてしまったんですね。これは大失敗でした。東大が残したのは英断です。
濱田 当時、東大の学内でもかなり議論されたようですが、よく残したと思います。私も教養こそがタフな学生の下地になると考えています。最近は、教養のカリキュラムの幅を広げるとともに、討議力の育成や英文ライティング教育にも力を入れています。
濱田純一(東京大学総長)×松本紘(京都大学総長)/東大総長×京大総長「タフな学生育てます」『文藝春秋2010・2』
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