「ケーキ」原因説
だがワイルスミスは、牧場の餌の投与記録に、不吉なわらべ歌が韻を踏むかのように「ケーキ・イン・パーラー」という記述が繰り返し登場することが気にかかっていた。
「ケーキ」とは高タンパク濃厚飼料のことで、通常、搾乳時、つまり「搾乳室(パーラー)」で投与される。牛は搾乳時には個別につながれるため、それぞれの必要に合わせた補助食品を与えるのに都合が良いのだ。牛は「ケーキ」が好物で(なにしろ糖蜜入りで甘かった)、搾乳におとなしく協力するご褒美だと思っていた。
「ケーキ」に含まれる重要なタンパク源のひとつに、他の家畜、しかも牧場で死んだために人間の食用として売ることのできない家畜の肉があった。そのような家畜の死体は卸業者に引き取られ、精製加工業者に売られた。精製加工工場では、その肉を煮たうえで化学処理を施し、飼料販売業者に出荷する。それが包装加工され、畜産業者に売られるというわけだ。何らかのきわめて強靭な感染因子がこの工程を生き延びることは、可能性は低いにせよ、ありえなくはないとワイルスミスは考えた。
ダニエル・T・マックス『眠れない一族』紀伊國屋書店2007年
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