シュールな毒蛇村住人
―テレビやネットの情報で世界のことを大体知っている気になっていましたが、この写真集を見て「世界にはこんな生活を送っている人たちがいるんだ」と改めて実感しました。
そうですね。パラグアイの「毒蛇村」という村に住んでいる人たちは、5年前までは裸族だったんですよね。最近政府が洋服の古着を配るようになって、僕たちが行ったときには下がふんどしで上がタキシードという人たちがいた。着方が分からないからサイズだけで決めたんだろうね。ロングドレスを着た裸足のおばさんがいたり、なかなかシュールな風景でしたね。普段の食べ物はワニとアルマジロとガラガラヘビ。でも仕事に追われる人は一人もいないから、基本的にハッピーに暮らしている。世界中でそういう人を濃密に見てきましたね。
―そういう辺境の村に暮らす人に共通する部分というのは何ですか。
何が幸せで何が悲しいか、という感情の基本は同じですね。それを理解したときにお互いに通じ合うものがあるかもしれない。昔トロブリアンド諸島の裸族のところに行ったときは、顔に刺青はあって怖いし、皆ブッシュナイフを持ってるし、警戒して心を許してくれない。でも一緒に鮫狩りに行って僕も海にに飛び込んだら認めてくれて、海岸で鮫の丸焼きを食べた。普段は芋を食ってますから鮫がご馳走なんですね。
焚き火を囲んで日本語で「美味しいね」と言ったら、向こうも分かってくれて「お前もこの味がわかるのか」というようなやりとりがあった。最後に別れるときはお互い涙でしたね。
世界には我々日本人の常識からすると「なぜこんな暮らしを続けているんだろう」と思う人がたくさんいる。多くの人々はまだ自由に旅すら出来ず、がんじがらめの制約のなかに生きているんです。
インタビュー書いたのは私です/椎名誠『週刊現代2010.3.6』
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