愛い奴じゃのぅ
一日ドナウ河の堤を散歩していたとき、私はワタリガラスのよくひびく呼び声を耳にした。
私がそれに答えると、その大きなカラスははるか大空の高みからさっと翼を閉じ、息もつかせぬ速さで舞い降りてきた。そしてはげしい風とともに翼を広げて落下をやめ、まるで重さなどないもののようにふわりと私の肩にとまった。その一瞬私には、このカラスに引き裂かれた数々の本も、略奪されたアヒルの卵も、すべてつぐなわれたように感じられた。私のカラスもきっとそのことを気に病んでいたにちがいない。
コンラート・ローレンツ『ソロモンの指環』早川書房1987年
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