人間の定義
だが、プリオン病が私たちに与えてくれる驚くべき第二の教訓は、人間を人間たらしめているもの、すなわち私たちの野心こそが、人間をプリオン病(FFIのような遺伝性のものではなく、狂牛病のような感染性のもの)の危険にさらしたという事実だ。
18世紀のスクレイピーや現代の慢性消耗病(さらに言えば、先史時代のプリオン病)を含め、プリオン病の大発生は特定のタイプの品種改良と給餌法が原因かもしれない、というのが現在の見方だ。したがって本書は、知りたい、作り直したいという欲求につねにともなう、人間の特性のうちでも危険な一面についての本でもある。ルネサンスのとき、フィレンツェの人文主義者ピコ・デラ・ミランドラは、人間を「プラステイス・エト・フィクトル」、すなわち自らの作り手・形成者と定義した。だが、それではとても十分ではなかった。人間はけっして自らの作り手・形成者にとどまらなかった。人間は周りの世界の作り手・形成者ともなる。人間には、聖書に約束されていたとおり、支配権があった。それを行使しないのは馬鹿げていた。
ダニエル・T・マックス『眠れない一族』紀伊國屋書店2007年
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