指パッチンの哲学
ポール 僕は毎年よく成人式に招かれて話をするんですけど、いきなり怒鳴りつけますよ。「何なんだ、チャラチャラして。ファッションショーじゃないよ、おれが遠くから飛行機に乗って来たのは、僕ごときのくだらない話でも聞いてもらって、これから生きる上で何か役に立てばと思うからだ。それを雑談を交わしたり着物の比べっこをしてどうするんだ。大体、遠来のゲストに対してそういう態度をとること自体、大人になってない証拠だ。話を聞きたくないやつは出てけ!」と。しーんとします。
ポール 聞いてます。「ねぇ、ねぇ、"指パッチン"やって」と言う。"指パッチン"をやりにきたんじゃないって言うんですけど」(笑)。
藤森 "指パッチンは言われますか。
ポール 言われます。やりますけどね(笑)。"指パッチン"について三十分話しますよ。「"指パッチン"とは何か」と言って(笑)。
藤森 只じゃやらないんだ(笑)。
ポール こじつけです。体のなかにあるエネルギーを指先に集約させるんだ、そうして「しあわせになってね」「健康でいてね」という祈りをこめて・・・・・・("指パッチン"実演)。
赤瀬川・藤森 (大爆笑)
ポール こうやって相手のハートにパチンとたたき込むんだ。それが"指パッチン"の原点だ、ただ単に鳴らしてると思うなと言ってね。そうすると納得しますよ。
赤瀬川 なるほど(笑)。
ポール いちばん大事な人のことを思い浮かべろ、友達のなかに病気の人も、苦しみ悩んでいる親をもっている人もいるだろう、その人たちのことを思って、どうかうまくいきますようにと祈りながら指を鳴らしてみろ。どうだ、体が熱くなってきただろう、って説教してやる。そうすると関係者が「貴重なお話をありがとうございました」と頭を下げる。貴重でも何でもないですよ(笑)。
赤瀬川原平『老人力のふしぎ』朝日文庫2001年
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