知恵を愛する人
教団設立からほどなくして、ピュタゴラスは、"ピロソポス(知恵を愛する人)"という言葉を作り出し、それによって教団の目標を明らかにした。オリュンピア競技祭を見に行ったときのことである。ピュタゴラスはプレイウスの僭主レオンから、「貴殿は何を専門としているのか?」と尋ねられた。これに対し彼は、「私はピロソポスです」と答えたのだった。そんな言葉を聞いたことのなかったレオンは、ピュタゴラスに説明を求めた。ピュタゴラスが答えて曰く、
レオン公、人生とは国民的祝典のようなものかもしれません。ある者は賞金を目当てに、またある者は名声と栄誉を得ようとしてここに集まってきます。しかし、ここで起こることすべてを観察し、理解しようとして来る者は多くありません。
同じことが人生についても言えましょう。ある者は富への愛によって動かされ、ある者は権力と支配を欲する情熱に盲目的に引きずられています。しかしもっとも優れた人間は、人生の意味と目的とを見出すことに専心するのです。自然の神秘のヴェールを剥ごうと努力するのです。これこそ私が、知恵を愛する人と呼ぶ人間です。というのも、あらゆる点で非の打ちどころなく賢い人間などおりませんが、知恵を愛する人は、自然の神秘への鍵としての知を愛することができるからです。
サイモン・シン『フェルマーの最終定理』新潮社2000年
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