パラダイムシフトの本質
新しいパラダイムを素人は受け入れやすく、専門家は専門家としての自分の地位を守るために懸命になって拒否するわけだ。このためパラダイムシフトの真っ只中では、素人が専門家より知識の面で先を行って最新の情報を享受し、専門家は古い知識(=旧パラダイム)にしがみつくことになる。
このような「専門家集団と素人の間での逆転現象」は、パラダイムシフトの渦中では常に起きていたはずだ。そしてこの逆転現象こそがパラダイムシフトを完成させる駆動力となり、パラダイムシフトの本質なのである。
なぜそれらが駆動力になるかと言えば、専門家は生まれながらに専門家だったわけではないからだ。彼らはもともとは素人であり、勉強して専門家になった。つまり、専門家集団の背景には膨大な数の「知識のない素人」が必要である。
一般大衆(=素人)の間に新しい考えが広まってくると、次世代の旧パラダイムの専門家の予備軍(=知識のない素人)がいなくなってしまう。その結果、旧パラダイムの専門家集団への新規加入者が減り、やがて新規加入者より集団内の死者の方が多くなり、そのうち専門家集団は老衰死・自然死を迎える。その時パラダイムシフトは完了する。
繰り返しになるが、パラダイムが信じられている時代では専門化が指導的立場にあるが、そのパラダイムが崩れようとしている時には、素人の方が最新の知識を持つのだ。
夏井睦『傷はぜったい消毒するな』光文社新書2009年
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