啄木も丸文字使用?
福島党首は1955年生まれであり、女子学生の間で丸文字が流行り始めた70年代にはちょうど十代後半。まさに丸文字文化花ざかりの世代である。
丸文字の発生には、70年代に急速に広まった横書き文化と、女性の文化的・社会的進出に大きな原因がある。
万葉仮名に端を発した仮名は、複数の文字が縦につながって語を形成する形を獲得する段に至って「平仮名」へと飛躍した。たとえば「あ」という平仮名は次の平仮名に縦につながるために最終筆は回転し、延びる。「う」も「す」も「お」もそうだ。こうした、縦書き専用文字である平仮名を横書きすると、それぞれの文字の末尾の回転は次につながるための伸びを欠くことになる。その結果、半円形のフォルムが並列され、漢字の角も取れ、丸みを帯びた文字が生まれたのだ。
また、丸文字は「はね」や「とめ」など筆蝕(言葉を綴っていく力の再現)の不得手なペンなど硬筆の普及の影響も受けている。『近代書史』でも触れたが、遡れば石川啄木が丸文字のような書きぶりな字を残している。これは新聞記者時代にペンを使っていたから。言偏の「口」の部分を「○」に書いている例も見られる。
こうして70年代に、丸文字が誕生した。
平仮名は古くは「女手」と言われたように女性が育ててきた。丸文字も、当時の女子中学生が育んでいった。福島党首の少女のごとき文字は、まさに女性が切り開いた時代と文字文化を担っている。
石川九楊(書家・京都精華大学教授)/現代政治化「文字」に品格を問う『文藝春秋2009・11』
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