感情の機微を隠す皺
「大いなる幸運と幸福を。それとご壮健をお祈りしております」
「ありがとうございます。伯爵も、この先いつまでも長生きなさいますように」
「ありがとう。もう永遠に生きたも同然でね、わたしは。もしあなたがこの先信心深くなったら、わたしが死んだときに、わたしのために祈ってくださらんか。何人かの友人たちにも、そうしてくれるように頼んでおるんですよ。わたし自身、歳をとったら信仰心が篤くなると思っていたのだが、そうはならなんだ」彼はそこで悲しげに微笑ったように見えたのだが、断言はできない。とにかく、かなりの老齢で顔は皺だらけだったから、微笑すると皺が総動員されて、感情の機微がわからなくなってしまうのだ。
アーネスト・ヘミングウエイ『武器よさらば』新潮文庫
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