ダチョウ抗体マスク
高病原性の鳥インフルエンザがヒトからヒトへ感染するようになり、新型インフルエンザとして流行った場合、それに対抗できるワクチンを事前に用意することは不可能だ。かといって発生と同時にワクチンを作り注射したとしても、体内で作られた抗体が病気に対応できるぐらいにまで量が増えるまでには少なくとも二週間以上かかる。パワーのあるウイルスが相手だと、抗体が大量にできる前に患者本人が亡くなってしまう可能性のほうが高い。現状では新型インフルエンザの発生時に治療薬として使えるのはタミフルとリレンザしかない。インフルエンザには抗生物質も効かない。
僕が新型インフルエンザウイルスに対抗できるダチョウ抗体でマスクを作りたい、作らなければいけないと思うようになったのも、こうした心もとない現状をなんとか改善できないだろうかと考えたからだ。
ダチョウマスクの開発を具体的に思いついたのは、ダチョウ抗体の分離・精製法を確立し、ニワトリの伝染性気管支ウイルスや肺ガンの抗体検査薬や肺ガンの治療薬の研究をはじめていた二〇〇六年のことだった。インフルエンザウイルスの主な感染経路は鼻と口だ。ダチョウ抗体マスクを開発すれば、いつおきてもおかしくない新型インフルエンザの世界的な大流行(パンデミック)の被害を、いくらかでも食い止めることができるかもしれない。
ダチョウ抗体をマスクの表面に塗っておけば、ウイルスが侵入しようとして攻撃をしかけてきたとき、ウイルスの増殖に関わる突起部分に抗体が鍵と鍵穴のようにパカッとはまり、マスクの内側まで侵入してこようとするウイルスの動きを止めてしまう。マスクの網目に依存する必要がない。
塚本康浩『ダチョウ力』朝日新聞出版2009年
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