クモの巣の使い方
ライーサはレオの負った傷を見た。肉と皮膚が裂けて、傷口はまだふさがっておらず、血が出ていた。腕に巻いたシャツの切れ端が血をぐっしょりと吸っていた。レオはそのシャツの切れ端をめくって言った。
「これぐらい我慢できる」
「犬に強烈な臭いの跡を残してしまってる」
ライーサはそう言って、川から離れると、近くに一本、木が生えているところまで行った。日本の枝のあいだにクモが巣を張っていた。ライーサはきわめて慎重に指で巣全体を枝から取り、レオの上腕の傷の上にかぶせた。細い銀の糸に触れるなり、血が凝固した。ライーサはさらに歩きまわってクモの巣を探し、見つけては取ってきて、レオの傷の上に重ねた。レオの傷は最後には縦横に走る銀色の糸ですっかり覆われ、ライーサが処置をやめたときにはもう血が止まっていた。
トム・ロブ・スミス『チャイルド44 下巻』新潮文庫2008年
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