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2008.07.04

物事をきちんと見る

大野 これはすべて、「物事をきちんと見る」ことを日本人がおろそかにしてきた結果だと思います。今の日本では、見ることと言葉を発することがばらばらになってしまっています。物事をきちんと見ていないので、きちんと語れないわけです。

大野 私の印象では、明治の中期までの日本人は、まだ物事をちゃんと見ようとしていたと思います。必死に勉強していましたし、ヨーロッパへ行った時もさまざまなことを吸収しようと、一生懸命物事を見ていました。ところが昭和に入ると、欧米の考え方を取り入れることにばかり熱心になって、一番大切な部分を捉えようとしなくなりました。さきほどのオバマさんの話に戻りますが、この人は、物事を見る目をきちんと持っていると感じます。一言で「チェンジ」と言っても、どう変えたらいいかは簡単にはわかりません。ところが、オバマさんはまずアメリカをきちんと見て、イラク戦争が抱える問題や国民に溜っている鬱憤を、「チェンジ」というやさしい言葉でつかまえました。それを繰り返し訴えて人々を動かしていますね。オバマさんと日本の政治家を比較すると、僕は寂しくなりますね。

大野晋(国語学者)×丸谷才一(作家)×井上ひさし(作家)/「KY」が日本語なんて・・・『文藝春秋2008・6』

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