左利きの右打者
あまり知られていないが、彼は左利きの右打者である。右利きの左打者なら掃いて捨てるほどいるが、その逆はきわめて珍しい。
イチロー(マリナーズ)にしろ松井秀喜(ヤンキース)にしろ福留孝介(カブス)にしろ、メジャーリーグで活躍している日本人野手のほとんどは右投左打である。
野球は右投手が多い。左打者なら右打者に比べてボールの出所がわかりやすい。加えて一塁にまで近いという利点もある。
最近は少年野球を見ても右投左打ばかり。イチローや松井のような成功例を見れば指導者や親が右利きの子どもを左打ちにかえるのもわからないでもない。
ところが坂本はその逆なのだ。少年野球時代にはマー君こと田中将大(東北楽天)とバッテリーを組んでいた(ちなみに坂本が投手で田中が捕手)というほどの"野球エリート"が、なぜ"左利き右打者"なのか。
「小さい頃は左用のグラブで野球をやっていたんですけど、やがてそれが手に合わなくなった。それで右利きの兄貴のグラブを借りたんです。それで遊んでいるうちに、いつの間にか左手でボールを捕り、右手でボールを投げるようになっていた。気がつくと右投右打ちになっていたんです」
坂本のバッティングを見ていると、先述したように利き腕である左が実に巧みにスイングをリードしている。インローのボールを正確にとらえ、パンチ力のある左腕でそのまますくい上げていることに気付く。これは左利きのアドバンテージといっていいだろう。
二宮清純/新日本野球紀行"恐るべき19歳"坂本勇人『本2008・6』講談社
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