男はふかふかのものに戻る
「泣く子とおっぱいに勝てない」というのは誰が言ったか知らないが、とにかく、泣くほどわがままな子供(男)とおっぱいは、座りのいいセットような気がする。泣こうがわめこうが、漂流しようが自分探ししようが、最終的には男はふかふかのものに戻る。ただし、その男が戻ろうとするおっぱいは、ただひとつのものであるという保証はない。泣きながら戻るはずのおっぱいにさえも、漂流していた男がいた。その男の名前は、ラッセル・アルビオン・メイヤー。「キング・オブ。ヌーディーズ」と呼ばれ、50~70年代にかけ、「セックス&バイオレンス映画」を撮りまくったコア映画監督・ラス・メイヤーである。
漂流は思わぬきっかけから始まる。巨乳の求道者ラス・メイヤーが完成された重要な出来事がこの戦争中に起こった。1944年8月23日フランス。彼の部隊はパリを目前にした、ランブイエという町で足止めを食らっていた。そこに忽然と現れたのが、アーネスト・ヘミングウェイである。「老人と海」や「武器よさらば」などで有名なこの文豪は、スペイン内戦や第二次世界大戦にも積極的に参加し、フランス国内を取材していたのである。
ラス・メイヤーと仲間がビストロで寛いでいると、そこにヘミングウェイの取り巻きのひとりが現れ、彼らを遊びに誘った。連れて行かれたのは売春宿。どうやら、そこはヘミングウェイの行きつけで、どういう気まぐれなのか、若いアメリカ兵たちを招待したのだ。
当時22歳のラス・メイヤーはまだ童貞、百戦錬磨のヘミングウェイがそれに気づいたのかどうかはわからないが、気を利かせた彼の計らいで、女性を選ぶことを促される。ラス・メイヤーが選んだのは、もちろん巨乳。この直球的反応からスタートした「漂流」の一端に大海原感たっぷりの文豪・ヘミングウェイの名が刻まれているのは、まさに文学というしかない。「どんな人種の女性にも興味があるが、巨乳でなければならない」。そんな素敵な言葉を残した彼は、2004年9月18日、ハリウッドヒルズの自宅で死亡。享年82歳。巨乳にかけた見事な人生であった。
中丸謙一朗(コラムニスト)/誰にも見つけてもらえない第4回 巨乳の大海原を漂う男『BiZNEXT2008・06』サンケイリビング新聞社シティ事業局
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