軍人の存在理由
<われわれ軍人は、戦に勝つということでお国に奉公する存在である。多くの賠償金や権益を確保すると国が富むことになり、天皇陛下をしてその心を安らめることができるのである。戦はわれわれの奉公の具体的な形であり、そしてその戦に勝つことによって得た富でさらに軍備を充実させることができる>
日本陸軍の軍人たちの心理を支配したのは、実はこの一点だったのである。日本の軍人たちは日清戦争で清国から莫大な賠償金(二億両)を獲得している。当時の国家財政の1・5倍である。それによって明治30年代からの富国強兵は成りたった。さらに日露戦争によって満鉄の利権を始めロシアがもっていた権益を確保し、樺太の南半分もまた日本の領土とすることに成功した。第一次世界大戦ではドイツが中国や東南アジアに有していた権益などを手に入れた。
戦争に勝つことによって、日本は世界の一等国になったのである。その賠償金によって国は富める国へと変わっていったのだ。
陸軍の軍人たちは、戦争を起こさない限りは自分たちの存在理由を見出すことができず、その起こした戦争に勝利を得ることによってのみ、お国に奉公しているとの強い確信が生まれたといっていい。
保坂正康『昭和史の教訓』朝日新書2007年
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