環境収容能力
池田 最近は少子化が問題視されているけれども、環境問題から考えても、一億三〇〇〇万人はちょっと多いよ。少子化と高齢化はそうなるための過度期的状況としてしょうがないでしょう。人口が減れば、エネルギーについても食料についても問題はずっと小さくなる。
養老 ジャレド・ダイアモンドが太平洋の島を色々と調べて持続可能性について考察をしたなかで、人口問題に触れている。自然環境を大きく変更しないで持続可能な人口は、たとえばオーストラリアは八〇〇万だという。いまのオーストラリアはその倍以上だから、限度を越えている。自然を破壊する傾向が大きくなって持続可能ではなくなっているということです。
現在の資源で考えれば、日本は密度としての人口が限界に来ているのではないかという気はするね。いまの状況では人口停滞が起こるのはやむをえないと思う。
池田 キャリング・キャパシティ(環境収容能力)から行くと日本はもはや限界なんだよね。僕なんかは人口は七〇〇〇万ぐらいに減ったっていいと思っているけれども、それがキャリング・キャパシティと適合していればいいということなんですね。キャリング・キャパシティが高いいまは人口が下がれば、そこには余地があるわけだから、絶対に他国から人が入ってくる。それは不可避で、外国人を入れるか入れないかという議論があるけれども、それは「入れない」ということにはできないんだ。
養老 人為的に止めることは実質的にできないだろうね。
池田 キャリング・キャパシティがたとえば一〇〇あるなかで人口が五〇しかなければ余裕で暮らせるけれども、キャリング・キャパシティが一〇〇あると、人口は一〇〇に近づくんだよね。それを止めるシステムをうまくつくれたら、環境問題なんて解決してしまうんだよね。
現実には、国境という障壁がある。たとえば地球が温暖化したって、国境がなければあまり関係ないわけだよ。適当に、そのときいちばん暮らしやすいところへぞろぞろ移動していけばいいという話だから。いま良いところが駄目になって、いま駄目なところが良くなったりすることがあったときに、その駄目な国からいい国へ人口を入れろといっても、それは政治的な軋轢があって難しい。
養老 適正人口は土地によって違う。それは間違いない。そのときに、どういうふうな計算をするか。どういう前提を置くか。それが大事です。
未来のシナリオというのは何本も書けるはずなのに、いまは、シナリオを一本にしようとするでしょう。「温室効果ガスによる地球湯温暖化」というシナリオだけがある。いろんな条件でシナリオは考えられなければいけない。
養老孟司×池田清彦『ほんとうの環境問題』新潮社
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