7秒、40秒
筋肉は、ATP(アデノシン三燐酸)と呼ばれる物質を使って活動します。ATPは、もともと筋肉の中に蓄えられているのですが、運動を開始すると、すぐに使い果たしてしまいます。それ以上運動を続けるためには、なんとかしてATPを作らなければなりません。
「有酸素性運動」と「無酸素性運動」という言葉を聞いたことがあると思いますが、これはATPを再合成する方法の違いを表した言葉です。
まず最初の補給段階として、筋肉中に蓄えられているクレアチン燐酸という物質を使ってATPを作ります。これで約7秒間持ちます。
次の段階は、筋肉中に蓄えられているグリコーゲンを分解してATPを作ります。ただし、グリコーゲンを分解すると乳酸ができます。100メートルほど全力疾走すると、足がパンパンに腫れて動かなくなりますが、これは乳酸によって筋肉が収縮しづらくなった状態です。
ここまでは、筋中では酸素は使いません。そのため、この運動を無酸素性運動と呼んでいます。これで、理論的には約40秒の運動ができることになっています。
ここから先は、酸素を使ってATPを作ります。糖や脂肪を酸化させてATPを作る方法です。これが有酸素性運動と呼ばれるものです。血液によって酸素が運ばれれば、継続的にATPを作ることができます。
しかし実は、無酸素性運動と有酸素性運動は、きれいにパタッと切り替わるというものではありません。短距離走でもスタートダッシュのときから有酸素性運動は始まっています。たま、長距離走をしている間でも、酸素の供給が追いつかなくなれば無酸素性運動で力を補おうとします。
無酸素性運動を「息を止めて行う運動」と勘違いしている人もたまにいるようですが、無酸素、有酸素は、あくまでも筋肉内部の話です。それを、短距離走は無酸素性運動だから息を止めて走るんだ、などと間違った指導をしないうようにしてください。
深代千之(東京大学助教授・教育学博士)『運動会で1番になる方法』アスキー2004年
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