売春するペンギンは5%
ペンギンは浮気も不倫もしないで、清く正しく――というぼくの幻想は南極に行って崩れた。しかし、ペンギン種の繁栄を考えると、「より賢く振る舞えるペンギンこそ生き残る」という自然の理にかなった生態を知ることができた。
南極の夏、アデリーペンギンたちは小石を集めて巣を作る。南極でペンギンの巣材になりそうな物は石以外、ほとんど見当たらないからだ。石なら、南極にたくさんあるのではないかと思うかもしれないが、繁殖地には10万羽ものペンギンが集まるので、くちばしで持てて使えそうな小石は、たちまち不足してしまう。そこでペンギン同市で、石の奪い合いが頻繁に行われることになる。つまり、ペンギンにとって、「石」は「お金」のような価値があるわけだ。
なんとしても、巣材の石を欲しいペンギンの夫婦はどうするのか。メスは、夫ではないオスに対して売春のような行為に走るという。ターゲットは、まだパートナーを決めていない独身のオス。小石が欲しいメスは、小石を持ったオスに近づき、つがいの行為に及ぶ。オスはそれに満足するが、その隙にメスはちゃっかり目的の小石をいただき、何もなかったように伴侶が待つ自分の巣に戻っていく。こういったメスから生まれてくる卵は、どうも旦那さまの子孫でない可能性が高いそうだ。
ぼくは、その話を聞いた後にハンター博士と一緒に南極を訪れる機会に恵まれた。そこで目の当たりにした繁殖地でのアデリーペンギンが石を奪い合う光景はすさまじく、特にペンギンたちが抱卵を始めたころは、無法地帯になっていた。だが、すべてのペンギンのメスが売春をしているわけではない。博士によると、売春するメスは全体の5%以下とのこと。そして、複数のオスとつがったメスが子育てに成功する割合は、格段に高いという。
藤原幸一/ペンギンが「身を売る」理由『読売ウイークリー2008.3.2』
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