例のマスク
パフォーマンスだって、プロなんだからやってもいいと思う。俺の場合はパフォーマンスというか駆け引きだよな。リーチが短いからどうしたらいいかと考えて、結果、わざと弱く見せておいてリングでガツンとやった。そしたら、相手はあれっ!? おかしいなってなるだろ。
試合は、リングに上がる前から始まっているんだ。柳済斗との再戦だって、ずっと何かないかって考えていた。それで思いついたのが例のマスクさ。調印式のときにマスクをして、ゴホン、ゴホンとやった。途中でトイレに立ってね。試合の前だから、小便なんて出ないんだよ。でも、ズボンのチャックを上げたり下げたりしながら、柳のトレーナーが確かめに来るのを待っていた。そしたら、隣に立って、「どうした」って聞くから、「ああ、大丈夫・・・・・・(ゴホン、ゴホン)大丈夫」ってやったんだよ。嬉しそうに帰って行ったよ。やったなと思った。選手を騙すにはコーチからさ。アルバラードにしても柳にしても、KO負けをくらった同じ相手から二度もタイトルを取り返したのは、世界でも俺だけらしいよ。
輪島功一(元プロボクサー)/新家の履歴書76『週刊文春2008.1.17』
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