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2007.04.04

個室あります

場違いなコンクリートの建物が並ぶ五合目バス停付近の雑踏を急ぎ足で抜け、悪名高い馬糞街道(?)へ。道幅は広いのだが、たしかにこんもりした異物の山があちこちに見られる。臭気もかなりなものだ。両側のダケカンバの森がせめてもの慰めか。黒い砂礫の道。ザックが重いのか足が沈む感じ。このあたりはまだ馬に乗った観光客が多いが吉田口からの登山口に入ると、ようやく登山者だけの世界になる。樹木がまったくない溶岩と砂礫だけのルート。見通しはいいが単調すぎるコースを黙々と連なっていく。

 六合目からおよそ一時間で七合目へ。
 ここで泊まることにしていたので東京から予約を入れておいた小屋へ入る。個室があるということでここに決めたのだが、実はたんに間仕切りがあるというだけである。一室(?)二畳くらいのスペースで、高さ一メートルほどのベニヤの仕切りが隣りとのあいだにある。着替えるために立ちあがると胸あたりから上はムキ出しになり、周囲もすべてお見通しである。山の上だからむろんゼイタクは言わないが、これだったらガイドブックに、
「個室あります」
 などとキャッチコピーを書かないでほしい。
 これでも個室料金はバッチリ取るのだから儲け主義もいいところである。
 さらに、夕食にびっくり。
 売店や受付がある土間にテーブルを二つと、ベンチを並べた食堂。外来者もしょっちゅう出入りするので落ち着かない。山の上だから調度品や建物に注文はつけるべきではなかろう。問題は食事内容だ。米と味噌汁に何とヤキトリの缶詰を一人につき一個ずつ配ってきたのである。あとはテーブルの真ん中に大きな振りかけのビンが置いてあるのみ。ゼイタクは言わないにしても、これでは余りにもひどいのではないか。缶詰だけだったらザックの中に入っている。火を通すとか、もう少し手を加えても罰は当たらないのではないか。
 富士山には大型ブルドーザーが入る道が山頂まで通じていて、各小屋はブルで物資を運んでいるというではないか。もう少しましなものを出せるはずなのだ。食事を提供するのが大変であれば自炊だけにすればいいのだ。そうなれば登山者も覚悟して自炊の容易をしてくる。ところが一泊二食で予約を入れているものだから、簡単な非常食だけでコンロも食料も持ってきていない。小屋としては素泊まりより一泊二食のほうが余分に料金を取れるので、こうしたあこぎな商売をしているのであろう。
 腹が立ったのでヤキトリの缶詰にはまったく手をつけずに、早々に間仕切りの囲いの中に戻り、乾燥ホタテのヒモをかじりながらポケットウィスキーを飲む。
「富士山の小屋はひどいところが多い」
 とは、しばしば言われることだが、まさに、実感!である。
 ところが、翌日、もっととんでもない小屋に出くわした。
 
加藤久晴『傷だらけの百名山』新風舎文庫2005年

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