最後の江戸文化
アメリカの文化人類学者、テオドル・ベスターさんが『築地』(「木楽舎」)を刊行した。築地というマーケットから日本経済の特異性、流通ルートの仕組み、日本の食文化等、様々な表情をあぶり出した一冊だ。そんなベスターさんの築地との出会いは約十八年前に遡る。
「ある寒い二月の朝、知り合った板前さんに連れられて行ったのが最初。魚の品揃えに驚いたし、雑然とした中で人がエネルギッシュに働く光景が面白かった」
ベスターさんが築地を研究テーマに選ぶのに、時間はかからなかった。築地との出会いから約十年間、アメリカと東京を行き来しつつ、築地の内部に分け入って研究を続けてきた。
「最初の二年間くらいは道に迷いました(笑)。でも毎日新しい人と出会い、その人のストーリーを聞くことができて楽しかった。魚の名前だけでなく、日本の食文化など伝統的なものを学ぶ過程も楽しかったですね。まるで小学生のような気持ちで新鮮でした」
しかし、今や外国人の観光客も多数訪れ、浅草や新宿に次ぐ東京名所の築地にも、数年後には移転が迫っている。
「そうすると今の仕組みがなくなる可能性が高くなる。東京の最後の江戸文化がなくなると、東京の魅力が薄くなる。ちょっと寂しいですね」
テオドル・ベスター/「築地」と出会って十八年『週刊文春2007.4.5』
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