チャリンコの語源
もう随分前から、普通に通じるようになった「チャリンコ」という言葉だけど、その語源。これがまたはっきりしないのだ。
最も有力な説としては、韓国語で自転車を表す言葉「チャジョンゴ」が「チャリンコ」に転じたというモノ。これはかなりそれっぽい。つまり「チョンガー(独身者)」「パッチ(ズボン下)」などのように、韓国からやってきて日本語化した言葉の一つというわけだ。それならそれで悪くないのだが、残念ながらこの説について確たる証拠がない。それに、チャリンコという言葉が今のように蔓延しはじめたのが、一九六〇年以降の東京下町地域からであることを考えると、どうも偶然の産物という気がしないでもない。韓国から日本にやってきた言葉というのは、多くの場合、戦前戦中のある一時期に集中しているものだから。
次いであげられるのが、単なる擬音説。
チャリンチャリーンの自転車の音を模した、もしくは、チェーンがチャリチャリと鳴る、その音を模しというもの。私はこれはこれでかなりの説得力を持つと思う。「発する音が語源の通称」というのは、実にたくさんの例があるものだから。一番最近の例を取ると、アナタの奥さん(お袋さん)もきっとそう言うであろう「テーブルに載ってるカレー、チンしといてね」の手合いだ。なんだ、チンって。犬か?
これまた確たる証拠はない。しかしながら、私は可能性としてかなり高いと思っている。
三つ目の説が、戦後の貧しい時代のスラングから、というもの。チャリンコは「子供のスリ」を表していたのだそうだ。これについては、私などは「はぁ?」なのだが、お年を召した方に聞くと「あの当時、確かに浮浪児のスリのことをチャリンコと言った」のだという。まだ技術の未熟な子供スリが小銭をチャリーンと落としながら駆け出していく、もしくは、その子のポケットの中で小銭が鳴る、そういったものが語源になったのかもしれない。ただ、それが何で自転車の通称に転じるのかが分からない。似たような説の一つに、漫画「じゃりんこチエ」などにも使われている「じゃりんこ」が語源、というものがある。「じゃりんこ」すなわち「子供」が自転車に転じたというものだ。これまた「子供=自転車」と直接つながるのがよく分からない。
これらの説のうちのどれか、もしくは全部が語源なのか、はたまた、まったく別の語源があるのか、そのあたりはまったく不明だ。
疋田智『快適自転車ライフ』岩波書店2002年
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