風との出会いは一期一会
小型エンジンを付けたモーターパラグライダーを繰りながら、ハイビジョンカメラで撮影する。こんな離れ業をやってのける撮影家は、「僕一人だと思うよ」。
モーターパラグライダーの速度は原付き並み。プロペラが巻き起こす吹き下ろしの風もないので、建物の近くまで迫ったり、地面すれすれを飛ぶことができる。その浮遊感や滑空間を、撮影技術を駆使してハイビジョンカメラに収める。砂漠の砂粒が浮かび上がるほど、その絵はリアル。自分が進む方向をカメラで追う「鳥の目」で撮っているので、見ていて酔うこともない。
腕を買われて、世界遺産の撮影依頼などが舞い込んでくる。撮影交渉は政府間レベルという、大がかりなプロジェクトも多い。「そういう場所だからテストフライトはできないし、飛び立った後は不時着などのミスも許されません。それに僕は、編集に頼らず、ノーカットで撮る主義。一筆書きの世界を表現したいんです」。それゆえ、機材から体調まで万全の準備で臨むという。
最後の決めては、やはり風。向き、強さともにベストな風をつかまえ、一瞬にして飛び立たなければならない。最も緊張が高まる瞬間だ。ピークの風を判断するのに欠かせないのが、写真のウインドメーター。一見オモチャのようだが、中は基板でびっしり。プロペラで発電して、正確に風力を表示する。14(風速毎分14㍍)を超えると、危険と判断して飛ぶのをやめるという。
「風との出会いは一期一会。風に乗り、風と会話しながら飛んでいく、僕自身の感動を見ている人に伝えたい」。目指すのは、「世界ナンバーワンの飛行撮影家」だ。
矢野建夫(飛行撮影家)/ウインドメーター商売道具『読売ウイークリー2006.4.16』
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