コンディション
「スズキをどう思うか」とトルシェに尋ねられ「くさびの仕事ができるし、相手の激しいチェックに負けないでボールをキープできる。そういう意図で使うのなら彼はいちばん強さがある」と説明した。トルシェも同意見だった。
ただ、先発を告げられた鈴木は心配そうな顔だった。
「お前の不安は分かる。でも、1試合だけなら絶対にスタミナも持つから心配するな」と励ました。根拠のない励ましではなかった。
「休み明けだから、かえって疲れは取れて体も軽いくらいじゃないのか? でも、2試合目以降は練習していないリバウンドが襲ってくるよ。足はパンパンになるし、体全身に張りも来て、体が重くなる。でも、とにかく1試合はやれるはずだから」
「えーっ?」という感じで鈴木はまだ不安がっている。
「お前にとってすごいチャンスだろ。1試合持たなくてもいいし、こちらも持つと思っていない。だから、やれるところでまでフルにやれ。それがお前の評価になるから。それが長続きするかどうかは関係ない。お前のコンディションが悪いことはちゃんとトルシェにも伝わっているし、それはしょうがないことだ。それより、お前のポテンシャルを表現することがこの試合では大事だから。最初からガンガン飛ばしていけ。90分持たそうとして、パフォーマンスを低く見られるほうがもっとダメだぞ」
鈴木には、意を決する強さ、とでもいうような能力がある。決意したことをやり抜くハートも持っている。だが、決して器用な選手ではない。それだけにカメルーンから奪った2ゴールには驚いた。
山本昌邦『山本昌邦備忘録 トルシェジャパンの一三六九日』講談社2002年
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