初めはみな女に生まれる
白洲 先生、脳みそと性別というのは関係があるものなんですか。
養老 性
差ですか、それはありますよね。あるけど、そういうのはあんまり意味がないんです。一番はっきりした例をとって言えば、男のほうがだいたい女より背が高いんだけど、男の人を一人とって、それより背の高い女の人を探したら必ずいるでしょう。要するにそういうことですよ。違うと言っても、女一人とってきて、それよりももっと女性らしい男を探してこいって言えば必ずいるんで、あんまり意味がない。傾向はありますけど。もうひとつは、妊娠・出産に関係のあるような機能は男になくていいわけですから、そういう部分は違いますよね。それも若干です。
白洲 多田富雄さんに伺いましたけど、なんかみんな女に生まれるんですって、初めは。
養老 そうです。初めは女というよりも、もともとの形は女です。
白洲 それはホルモンで男に。
養老 そうです。男は無理してつくってます。
白洲 ほんとにご無理でご苦労さなですね(笑)。
養老 よくわかってます。母を見てましたから、いつもそう思ってました(笑)。やっぱり哺乳類は元が女なんですね。ところがニワトリとか爬虫類は逆なんです。ニワトリは、雌を去勢しますとね、とさかが生えてきて、コケコッコーって言うんです。
白洲 だって、人間だっていくらかそういうふうになるでしょう。
養老 なりません。いくらか男に近いのがいますけど。染色体で言うと、爬虫類と鳥は哺乳類とさかさまなんです。無理して女に引っ張ってるという形だと思います。だから、鳥とか爬虫類というのがよくわからないんです。一応哺乳類の元はああいうものだという言われているんだけど、そうじゃないですね。分かれてからだいぶ変わりました。根本的に違うところがずいぶんあります。例えば鳥や爬虫類ともうひとつ違うのは、大血管といって、われわれは大動脈が左にあるんですけど、彼らは右にあるんですね。もともと大動脈は右と左に二本あって、片一方はつぶれるんです。胎児の時にはちゃんと両方できてくるんですけど、哺乳類と爬虫類はそれがさかさまになっているんです。だから一旦今の爬虫類みたいな形の動物をつくっておいて、そこから哺乳類をつくろうと思っても出来ないということです。性もさかさまになっているし、大血管もさかさまになっていうますから。もっとはるか昔の、ごちゃごちゃで区別のつかない時代に分かれたことは間違いない。
養老孟司×白洲正子「身体の不思議」『おとこ友達との会話』新潮社1997年
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