視力3・5の失敗
いまから18年前、山梨県に虫採りに行く途中、山奥の林道で虫に目を奪われた清彦さんは、運転していたジープごとガケから谷間に転落。幸い、落ちたところが水のあるところで、命に別条はなかった。
夫「昔は視力が3・5近くあって動体視力も自然と鍛えられていたから、運転しながらでも、小さなカミキリムシの種類が判別できたんだよね。珍しそうな虫がいたら車を止めて捕まえようと思っていたんだけど、あのときはずっと目で追ってたら、車ごとドッカーン。全身青あざで、1週間ぐらい寝てました」
妻「主人は自力で電車に乗って帰ってきたけれど、顔じゅうが紫色に腫れ上がって、シャツとズボンには血がついていたんです。『込んでたのに、僕のまわりだけは誰も乗客が座らなかった』って言うから、そんなグロテスクな姿をしていたら当たり前よって言ったの」
夫「落ちた瞬間、真っ先に思ったのは、本を書いておけばよかったということ。ライフワークになった、構造主義生物学の処女作を構想していたから・・・・・・」
妻「普通の人は、生死ギリギリのときには、家族のこととか、もうちょっと違うことを考えるでしょう?」
池田清彦(58)早稲田大学教授・生物学者×池田正子(56)/夫婦の情景『週刊朝日2005.9.16』
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