七日一廻り
天下人の家康が一廻り七日間の湯治を実践することにより、後の江戸っ子の湯治ブームの中で、この湯治法が根付くことになる。家康の熱海湯治から四百年を経た平成の現代でも、その習わしを踏襲していることに驚きを禁じ得ない。
われわれの先人たちは単に惰性でそうして来たわけではなかった。免疫力を高めるのにこの単位が心地よいリズムであることを経験的に知っていたのであった。それが理に適っていたことが、日本とドイツの温泉医学者によって、最近、解明されている。
阿岸祐幸・北海道大学名誉教授やドイツの温泉生理学者ヒルデブラント博士等は、湯治の開始によって、ひずんだ状態にある生体の諸機能がほぼ七日周期のリズムを描きながら正常化していくことを突き止めたのである。
中世から、そして近世には経験則からほぼ確立されていた七日単位のわが国の湯治法は、生体リズムを整えるうえで適切であったことが科学的に証明されたのであった。
「リズム性反応の主役は自律神経だ。交感神経が優位になると、警告反応が起きる。エネルギー源である血糖値を高め、血圧、脈拍数を上げて血流量を増やし、『闘う態勢』をつくるのだ。だが、しばらくすると副交感神経が優位になり、過剰反応の修復を行う。
このように、交感神経優位相と副交感神経優位相が交互に発現して、生体の機能(適応)性反応の波が生まれる。自律神経全体の平衡状態が整うまでこの波動はつづき、体の抵抗性が高まる」(飯島裕一『温泉の医学』)
松田忠徳(札幌国際大学教授)/江戸温泉物語『週刊新潮2005.8.25』
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