100シーズン10秒
野球のセオリーを検証するために、初めてコンピューター・シュミレーションを利用したのがアーサー・ピーターソンだ。1972年、スタンフォード大学統計学科大学院生だったピーターソンは、どういった打順が一番多く得点が入るかという問題に答えを出すために、大学の「大型計算機」を使ってコンピューター・シュミレーションを実施した。
2260行のフォートラン・プログラムを実行するためには、他の利用者がいなくなる深夜まで待たなければならなかったが、スタンフォードの大型計算機は、100シーズン分の試合結果を、わずか10秒で算出したのだった。
ピーターソンのシミュレーションは、「どんな打順を組もうが、得点数に差は出ない」という驚くべき答えを出したが、実は、史上ただ一度、この理論を検証したのが、スタインブレナーに5回馘首されたことで有名なビリー・マーチン監督だ。1972年、当時タイガース監督だったマーティンは、対インディアンス戦で、打者の名を書いた紙9枚をランダムに並べることで打順を組んだ。試合は3対2でタイガースが勝ったが、同点二塁打を放ち決勝のホームを踏んだのは、その日4番に入ったチーム一の貧打者エド・ブリンクマン(通算打率2割2分4厘)だった。
李啓充/大リーグ養成コラム『週刊文春2005.3.10』
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