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2005.02.02

長持ちコンプレックス

リリー でも、親父の字はうまいんだけどすごい個性的なんですよ。かえって読みにくい。「冷やしトマト四百円」とか書いてあるんだけど、壁にお経が貼ってあるみたいで、誰も読めないんです(笑)。頼んだ手前、おかんもその品書きをすぐには替えられないでしょ。結局、客もみんな、おかんの書いた小さなメニューを見ながら頼んでるんですよ。

リリー あと、意外と上手なのが、警官が駐禁キップを切る時にボールペンで書く字。免許証見ながら「本籍・福岡県」とか書くんだけど、みんな上手なんだ。
ナンシー ボールペンは難しいのにね。
リリー 公式な報告書だから、完全な楷書でカチンと書くんですよ。まあ、キップ切られてる時はこっちもくすぶってるから、下手な字で書かれたりしたら、余計にイラつきますもん。きっと、交通課の人とかはあの字体を勉強させられるんだろうな。あと、医者のカルテもドイツ語だからわかんないけど、日本語で下手だったら不安になるよ、絶対。
ナンシー 署でナンバーワンの達筆は、「荒川河川敷殺人事件捜査本部」と書くけどね(笑)。でも、字のうまい下手と頭の良し悪しは、何の相関関係もないでしょ。中学生の時に、ものすごく頭の悪い男の子が同級生にいたんですよ。その子、身長153センチぐらいでさ。野球部のくせに野球が下手で、運動もダメ。ホントに何もできないんだ。でもね、字がメチャクチャうまいんですよ(笑)。
リリー それだけでもいいじゃないですか。ただのバカじゃないってことで。
ナンシー でも、テストの答案用紙とか強烈でしたよ。先生よりも達筆な字で、とんちんかんな事が書いてある(笑)。ものすごく上手な字で意味のわからない文章が書いてあるのって、ちょっと不思議なもんですよ。
リリー でも、俺は汚い字の100点よりキレイな字の0点のほうが人生のスパンではツブシがきく気がする。
ナンシー 確かに、社会に出た時に、どっちが役立つかとなるとね。
りりー 字が下手っていうのは、一番長持ちするコンプレックスのような気がする。なんだかんだ言っても、人前で字を書かなきゃいけない機会は絶対にありますもんね。冠婚葬祭とかさ。

ナンシー関×りりー・フランキー『りりー&ナンシーの小さなスナック』文芸春秋2002年

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