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2005.01.20

人がイヌ・ネコと違うのは

作家の曽野綾子氏が、ゆとり教育を推進する文部省(当時)の答申で、「生きてきて数学が役に立ったのは、曲がって行くよりまっすぐ行ったほうが近い、ということだけだが、そんなことならイヌ・ネコでも知っている」と宣ったらしいのである。

 事実とすれば、なんという不遜な言葉。曽野氏は学問を何と心得ているのだろう。
 終章で、小島氏は伸び伸びとした文章で曽野氏の考えにそっと釘を刺す。ウィトゲンシュタインとハイデガーを引用し、数学の意義を平易に説く。ピタゴラスの定理を普通の中学生にいとも簡単に説明してみせた逸話など、圧巻である。あと書きで、東大数学科の大学院の入試試験を落ちて経済学者になり、改めて数学の魅力に惹かれた告白にも強く共感してしまう。
 私なら、もっと率直に曽野氏に反論する。真・善・美の追求は人間の本性である。真理の追究といっても、医学的真実はすぐに変わってしまう。前述の肝臓癌の10年生存率も、現在では両治療法とも数十ポイントは改善されている。でも、たとえばピタゴラスの定理は何千年経っても朽ちることはない。ゆるぎない「真理」を追究する数学は、教育の柱であるべきだ。

平岩正樹/読む抗ガン剤『週刊現代2005.1.29』

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