パニック障害
自分自身がこれと思ったら、それをやり抜く信念は他の人よりやや強いかも知れません。例えば高校時代、練習が終わった後で毎日グラウンドにスコップで自分が入れるほどの穴を掘り、それをまた埋めるというトレーニングを1年間欠かさずやったことがありました。監督から「世界最強のオールブラックスの選手もやっている」と言われたのがきっかけです。
ただ今回、執筆(『もっと強く、もっと愚直に』講談社)に当たり最後まで書くべきかどうか迷ったことがありました。それは4年前にかかったパニック障害という病気についてです。
これはある日突然激しい動悸と強烈な不安に襲われ、このまま死ぬのではないかという恐怖の淵に追い込まれる病気で、精神的なストレスが原因と言われています。私の場合も、発病する直前、アキレス腱を故障し半年ほどラグビーができない不安とチームに迷惑を掛けているという強い思いを感じていました。それらの不安やストレスがパニック障害を引き起こしたのでしょう。
幸い今はすっかり症状は改善していますが、最初の1年間はほとんど地獄の日々でした。突然襲ってくる発作や高熱、そして激しい動悸がまた来るのではないかという恐怖のために、ラグビーどころか食事も喉を通らず、生きているのがやっとという状態だったのです。
二度とあんな思いをしたくないというのが正直なところですが、振り返ると病気との闘いを通じて多くのことを学んだのも事実です。一つは妻をはじめ周囲の人たちがいかに自分を支えてくれていたのかに気づいたことです。
病気の後はラグビーに対する考えも変わりました。今までは自分が強くなることでチームを強くしたいと考えていたのが、あの選手が活かせるのではないか、という発想が出てきました。自分で言うのも変ですが、病気を克服したことで、人間的に一回り大きくなれたのかもしれません。このメンタル面で強くなれたことで、病気も無駄ではなかったとさえ思っています。
元木由記雄/[ 書いたのは私です・・・・・・インタビュー]『週刊現代2004.11・27』
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