旅行者血栓症(エコノミー症候群)
機内に限らず、椅子に腰掛けた姿勢(座位)での血流量は、仰臥した姿勢での三分の二にも低下しますが、更に膝を屈曲していると血流障害をきたし、血栓を形成しやすくなるのです。肺血栓は、肺動脈に血の塊が詰まって肺への血液の流れが悪くなる病気です。
血栓が小さければ自然に溶けて再開通しますが、大きな血栓の場合には、突然の呼吸困難、胸痛や胸部の不快感、あるいは血の混じった痰が出るなどの症状が現れます。特に太い肺動脈が詰まると突然死の原因になることもあります」
肺栓塞をもたらすのは脚の深部静脈にできた血栓だけではないが、これが肺まで運ばれて肺動脈を詰まらせるパターンが最も多い。そのシチュエーションとして飛行機の座席に長時間座るような状況をはじめ、股関節や大腿骨の手術後、婦人科や泌尿器科の病気で骨盤内や下腹部の手術を受けたとき、神経疾患で下肢が麻痺している場合などがあげられる。
「パソコンの前で指先以外動かさずに何時間も過ごすことも似たようなものです。また、妊娠中などでベッドに一週間以上安静にすることでも血栓ができやすくなります」
ちなみに二、三年前からは手術患者の血栓症を予防する手段として、弾性ソックスやエアシートを利用することが常識化されてきた。
「もともと血栓のできやすい人もいるのですが、一般的に座位でたった二時間過ごしただけで、血液の粘度が高くなり始めることも実験で確認されています」(中略)
エコノミークラス症候群(旅行者血栓症)(学会提唱の名称)は、若い人にも起こるが、最も多いのは六十歳代の女性だ。この年代は、尿失禁や過活動膀胱などの有病者も多く、その日常管理として外出や就寝前などに水分摂取を控える人が多い。また、加齢に伴って渇きには鈍感になり、飲みたいという欲求を待っていたのでは間に合わないので、例えば、五時間、十時間というフライトや高速バスでは水分の定時補給をノルマとしよう。最近の研究成果として、イオン飲料はミネラルウォーターに比べて排泄される尿量が少なく、体内貯留率が高いことが確認されたそうだ。なおアルコールやカフェインを含む飲み物は利尿作用があるので、水分補給の目的として飲むのは適当ではなく、楽しむ場合はほどほどの量にとどめよう。
病院情報ファイル2004『週刊文春2004.12.16』
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