モンゴロイドの平均脳重>欧米人
澤口 環境に合わせて脳をつくっていくには、変化のポテンシャルが大きいほうがいい。脳が柔らかくてシナプスが自由に変化できる期間が長いほうが、複雑で適応的なネットワークをつくるには有利といえます。シナプスの変化は幼年期に最も激しく起こるので、「幼年期の延長」、つまりネオテニーによって脳が発達するわけです。
澤口 生物の神経ネットワークの複雑さは、ヒトの脳が最大といっていい。単純に大きさだけを比較すればゾウやクジラのほうが大きいのですが、体の大きさを考慮して補正するとヒトがダントツに大きいのです。ニューロンの数、シナプスの数も、霊長類のなかではヒトが頂点というしかない。ニューロンの数、シナプスの数も、霊長類のなかではヒトは突出して多いんですね。だから賢い。ヒトがこれだけ賢くなれたのは、幼年期の延長という究極の生き残り戦略のたまものであり、ネオテニーのおかげなんです。
伸坊 ネオテニーは退化じゃなく進化だといういことですね。とくに脳に関してはコドモっぽいほうが優れている。
澤口 そういうことです。ネオテニーを抜きにしても、哺乳類の進化では一般に「時間的にあとで出てきたもののほうが脳、とくに相対脳重が大きくなる」といわれています。私も霊長類で調べてみましたが、たしかにそういう傾向があります。頭でっかちなほうが進化していると考えていいわけです。南さんはもう、すごくご立派ですから、進化していると思います。いや、だから賢いんですね、やっぱり・・・・・・ア、すいません。
伸坊 顔は立派なんですが(笑)。小顔に対して、巨顔とかデカ顔と言わずに、これからは「立派」ということにしようって、東海林さだおさんと協定したんですけどね(笑)。
澤口 とにかく、脳の大きさだけ見ても、モンゴロイドは進化しているといえます。実際、脳はヒトのなかではモンゴロイドがいちばん重い。モンゴロイドの平均脳重は男性の場合約1415gで、欧米人などほかのヒト集団に比べると、平均で50~150gほども重いんです。体格は小さいのに脳が重いということは、バランスからいうとそうとうの脳の比率が大きいということになります。ですから、体重で補正した相対脳重で見ると、少なく見積もっても他集団の1・2倍も大きいんです。計算の仕方によってはもっと大きい値になります。
ヒトがチンパンジーと分かれたのは500万年前ですが、ネオテニー化が始まったのは250万年前だ、という話はしましたよね。ヒトとチンパンジーは遺伝子で見ると1~2%の違いしかないといわれていますが、ヒトの脳はチンパンジー類の3倍にも発達しています。遺伝的なことよりも、脳の大きさで見た差のほうが大きいわけですよ。それだけ、ネオテニーによる脳の発達の違いというのは大きく出てくるんです。
南伸坊×澤口俊之『平然と車内で化粧する脳』扶桑社2000年
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