奇跡の標本保存法
現存するこの日本最古の昆虫標本が、なんと天保年間に作られたものだと信じられるだろうか。およそ一世紀半の時を経ても、虫の形状や色がつぶさに見て取れる。一部に彩色が施されているものの、この保存状態の良さは見事というほかはない。
大正初期、フランスの外交官で昆虫学者でもあったガロアが、東京市中の小道具店で発見したこの標本は、江戸期の幕臣で博物家として知られた武蔵石寿が、独自の保存法によって製作したものと判明した。
綿に載せた昆虫に、丸形のガラス容器をかぶせ、下面には厚手の和紙を糊付けして密封してある。桐製の箱は、大型のもので六個、小型のもので一五個の標本が入るように仕切りが施されている。
ガラス質も、現在のものに比べれば良質のものではなく、極めて簡素な作りであるにもかかわらず、虫やカビの害をほとんど受けていない。ガロアから寄贈された東京大学農学部による分析・研究を経ても、この良好な保存状態の理由は具体的に解明できていない。まさに奇跡の標本というほかない。
大江戸科学技術館/武蔵石寿作 昆虫標本『Fole2004・12』みずほ総合研究所
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